レンケーズ
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「うちはそこまで大きなクレームは来ないから」「現場の接客スキルでなんとかなっている」。そう思っている経営者・総務担当の方に、まず知っておいていただきたい事実があります。2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が全事業主の法的義務になります。従業員が1人でもいれば対象で、中小企業や個人事業主も例外なく、経過措置もありません。セクハラ・パワハラ・マタハラ・ケアハラに続く、5つ目の「雇用管理上の措置義務」です。
すでに東京都では2025年4月、全国で初めてカスタマー・ハラスメント防止条例が施行されています。今回の法改正は、その流れが全国レベルの義務に格上げされたものだと捉えてください。
法律上、カスハラは「顧客等の言動であって、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること」と定義されています。2026年2月に公表された厚労省指針では、典型例として次のようなものが挙げられています。
殴る・物を投げる・唾を吐くといった身体的な攻撃。土下座の強要、SNSでの誹謗中傷の示唆、人格を否定する暴言といった精神的な攻撃。大声での威圧、反社会的な言動。同じ要求やクレームを執拗に繰り返す行為。長時間の居座りや電話での拘束。そして、商品・サービスと無関係な要求や、著しく過大な損害賠償の要求です。
私は刑事課長として現場に長くいましたが、これらの多くは暴行罪・脅迫罪・強要罪・威力業務妨害罪・不退去罪といった刑法・軽犯罪法の対象になり得る行為です。「クレーム」という言葉に萎縮せず、行為そのものを見て、法律に照らして判断する。これは接客現場だけでなく、経営側にも同じ視点が必要だと考えています。
指針が求める対応は、大きく4本柱です。
第一に、カスハラには毅然と対応し従業員を守るという方針の明確化と周知。トップメッセージとして社内に発信し、対処の流れをあらかじめ定めておくことです。第二に、相談体制の整備。窓口を決め、判断が難しいケースも含めて広く受け付ける体制をつくること。第三に、事案発生後の迅速な事実確認と被害者対応。録音・録画の活用、行為者との対応担当の交代、必要なら警察への通報、そして再発防止です。第四に、悪質な事案への抑止措置。警告文の発出や、法令の範囲内での出入り禁止、それでも収まらない場合の法的措置(仮処分申立て等)まで、あらかじめ方針を定めておくことが求められます。あわせて、相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由にした不利益取扱いの禁止も明文化が必要です。
義務に違反した場合、行政による報告徴求命令・指導・勧告、さらには企業名の公表の対象になり得ます。
現場対応で一番危険なのは、「これくらいなら我慢すべきクレームか、通報すべき事案か」を、その場にいる従業員一人の判断に委ねてしまうことです。判断基準と行動フローが事前に決まっていなければ、いざという時に従業員は孤立し、疲弊し、最悪の場合は辞めていきます。法律を知らずに現場に立たせるのは、武器を持たせずに戦わせるようなものだと思っています。
施行まで残り1ヶ月半ほどです。方針の文書化、マニュアル整備、相談窓口の設置、従業員への周知・研修——やることは多く、後回しにするほど施行直前にしわ寄せが来ます。
「うちの場合、何から手をつければいいのか分からない」という段階でも構いません。弊社では、危機管理コンサルティングとして方針策定からマニュアル作成、研修、緊急時の初動対応まで、元刑事の実務経験をもとにサポートしています。少しでも不安を感じた際は、お気軽にご相談ください。

千葉県警察官時代、捜査一課課長補佐、所轄刑事課長を歴任。在職中、ストーカー殺人事件に携わり被害者保護の重要性を強く感じ、ストーカー・DV被害者を一人でも多く救いたい想いから2018年に株式会社RenK’zを設立。被害者を守る身辺警護、各種調査、とりわけストーカーの手口である盗聴、盗撮、GPSの発見調査に重きを置いている。