レンケーズ
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2026年8月26日、群馬県伊勢崎市で30代の保育士の女がストーカー規制法違反の疑いで逮捕されたという報道がありました。報道によれば、この女は元交際相手の30代男性に対し、約1カ月半の間に複数回にわたり自宅に押しかけるなどのつきまとい行為をしたとして逮捕された容疑者です(ライブドアニュース)。報道内容が事実であれば、という前提で見ても、この事件が示しているのは「ストーカー行為をするのは、特別に怖い人間だけではない」という現実です。保育士という、一般的には人当たりが良く信頼される職業の人が容疑者となった今回のケースは、多くの人に「まさか自分の身近な人が」という驚きを与えたのではないでしょうか。
私は警察官時代、数えきれないほどのストーカー・DV事案の現場に立ち会ってきました。現場で何度も感じたのは、加害者の多くが、事件になるまでは職場や近所付き合いでごく普通に振る舞っている人だったということです。むしろ「あの人がそんなことをするなんて信じられない」と周囲が口を揃えるケースの方が、実感としては多かったように思います。恋愛感情や別れへの執着は誰の中にもある感情で、それが歯止めを失ったときに初めて「加害者」という顔が表に出てきます。だからこそ、加害者を"特別な悪人"として遠ざける見方だけでは、この種の事件は減らせないというのが、現場で積み重ねた実感です。
制度としてのストーカー規制法や保護命令は、被害が顕在化し、被害者が警察に相談して初めて動き出す仕組みです。つまり、行為がエスカレートして「事件」と呼べる段階に至るまで、周囲や制度が介入する明確なきっかけが乏しいという構造的な空白があります。私自身、事件化する前に誰かが違和感に気づき、間に入っていれば防げたのではないかと悔やんだ現場が一つや二つではありません。この空白を、警察が動く前の段階で埋める役割や警察が認知して動いてくれる、つまり逮捕してくれるまでの間の身を安全い守ることを民間の立場から担いたいというのが、私たちがこの仕事を続けている理由の一つです。
ストーカー行為とは、特定の相手に対する恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨から、つきまとい・待ち伏せ・監視していると告げる行為・面会や交際の要求・無言電話や連続した連絡などを繰り返すことをいいます(ストーカー規制法第2条)。重要なのは、加害者本人には「相手のことが好きだから」「関係を修復したいだけ」という自覚しかなく、自分の行動が犯罪に該当するという認識が薄いケースが多いことです。
周囲が気づけるエスカレーションのサインとしては、次のようなものがあります。
家族や職場の同僚がこうした兆候に気づいた場合、頭ごなしに否定したり突き放したりするのではなく、「最近何かあった?」と関心を向ける形で声をかけることが、エスカレーションを止める最初の一歩になります。同時に、行為がすでに繰り返し行われている場合は、加害者本人への説得だけに頼らず、被害者側が警察や専門機関に相談できる状況を作ることも欠かせません。
ここで少し考えてみてください。もし自分の家族や部下、同僚が、別れた恋人のことを執拗に話題にし、行動を把握しようとしている様子に気づいたら、あなたはどう動くでしょうか。「そんなはずはない」と見て見ぬふりをするか、それとも早い段階で本人と向き合い、必要であれば外部に相談するか。多くの人は、身近な人を疑うこと自体に強い抵抗を感じ、判断を先送りにしてしまいます。しかし、行為が事件化してからでは、本人にとっても、周囲にとっても、失うものがはるかに大きくなります。一人で抱え込んで様子を見るよりも、早い段階で専門家に相談した方が、選べる対応の選択肢は確実に広がります。
Q1. ストーカー規制法違反で逮捕されるのはどんな場合ですか?
つきまとい等を繰り返し、被害者が警察に相談・被害届を出し、警告や禁止命令に従わず行為を継続した場合などに、ストーカー規制法違反として検挙されることがあります。悪質性や反復性、警告後の行為継続の有無が判断材料になります。
Q2. 加害者に自覚がない場合、家族はどう対応すればよいですか?
頭ごなしに叱責するのではなく、まず事実関係を落ち着いて聞き、専門機関や弁護士、警察の相談窓口に一緒に相談することをおすすめします。本人だけで抱え込ませず、第三者を交えることが行為を止める近道になります。
Q3. 職場の同僚がストーカー行為をしているかもしれないとき、会社はどこまで関与すべきですか?
業務時間外の私的な行為であっても、事件化すれば会社の信用にも影響するため、人事担当者が早期に事情を確認し、必要に応じて外部の専門家に相談する体制を持っておくことが望ましいといえます。状況によっては、雇用主側に賠償責任が生じる可能性もあります。
Q4. 被害者側はどのタイミングで警察に相談すべきですか?
「まだ大したことがない」と我慢せず、つきまといや執拗な連絡が始まった時点で、記録を残しつつ早めに警察や相談窓口に相談することが推奨されます。証拠が蓄積している方が、その後の対応もスムーズになります。
Q5. 民間の調査会社はどのような支援ができますか?
行動確認や証拠収集、加害者側との接触に関するアドバイス、必要に応じた身辺警護の手配など、警察が介入する前後の隙間を埋める形での支援が可能です。2026年8月時点でも、こうした民間支援へのニーズは年々高まっています。
今回の伊勢崎市の事件が私たちに教えてくれるのは、ストーカー加害者は決して"遠い誰か"ではなく、日常のすぐ隣にいる可能性があるということです。だからこそ、事件化する前の小さな違和感に、周囲がどれだけ早く気づき、行動に移せるかが重要になります。もしあなたが今、身近な人の言動に違和感を覚えていたり、逆に自分自身がつきまとわれていると感じているなら、一人で判断を抱え込まず、私たちのような元警察官が対応する専門機関に相談してみてください。状況を整理するだけでも、次に取るべき行動が見えてくるはずです。

千葉県警察官時代、捜査一課課長補佐、所轄刑事課長を歴任。在職中、ストーカー殺人事件に携わり被害者保護の重要性を強く感じ、ストーカー・DV被害者を一人でも多く救いたい想いから2018年に株式会社RenK’zを設立。被害者を守る身辺警護、各種調査、とりわけストーカーの手口である盗聴、盗撮、GPSの発見調査に重きを置いている。